ニューヨーク・ブラックカルチャーfromハーレム

ニューヨーク・ブラックカルチャーfromハーレム

New York Black Culture Trivia
New York Black Culture Trivia 2010.09.06
堂本かおる の 『from ハーレム』 (No.103)

ゲットーで子どもを育てるということ。

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           「ハーレム・ジャーナル」
    
       ゲットーで子どもを育てるということ。
    
    
                2010.09.06 Monday
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    ハーレムには、まだまだ捨て切れない魅力があり、
    だから住んでいるわけだけれど
    (ダウンタウンの激高い家賃が払えないという理由もあるけれど)、
    ゲットーは子どもやティーンエイジャーにとって、
    とてもリスクの高い場所だ。
    
    
    ゲットーに私のような非黒人や外国人が
    成人してからポンっと移り住んでも、大した問題は起こらない。
    その理由は、教育を受け終え、
    文化的にすでに出来上がっていることと、
    ここで生まれ育った子どもに比べると、
    コミュニティとの係りが格段に薄いこと。
    
    
    けれど子どもはそうはいかない。
    成長段階で身に付けていくもの全てがゲットー文化に基づくことになる。
    
    
    ゲットー文化とは、それを説明すると、
    それだけで本が一冊書けそうなくらいディープなので、
    ここでははしょるけれど、非常に分かりやすい例がカースワード。
    fuck, shit, bitch, その他にも山ほどあるカースワードを多用する会話は、
    それはそれでひとつの文化。
    それらの言葉を、まさにハマるタイミングで使い、
    しかも会話全体に独特のリズムがあり、
    これは他の人種にはなかなかマネの出来ない伝統文化なのだ。
    時に「あー、うまいこと言うなぁ」と感心する。
    
    
    しかし、私と夫は6歳の息子にカースワード厳禁の躾をしている。
    本人も他人が使っているのを聞くと「悪い言葉だ〜」などと、
    今は言っている。
    けれど、
    やがてティーンエイジャーになれば友だちとの会話では使うだろうし、
    それは構わない。
    要は TPO をわきまえること、
    つまり文化的(態度、ものの考え方、知識etc)にアメリカ中央社会バージョンと、
    黒人社会バージョンのバイリンガルになって欲しいのだ。
    
    
    アメリカ、
    特に黒人社会では男の子は9歳がターニングポイントだと言われる。
    それまでは正に子どもで、ほとんどの子は無邪気なままで居られる。
    とは言え、ゲットーには中流社会では起こり得ない事象がたくさんあり、
    子どもたちはそれらを見ながら育ってきている。
    そんな下地がある上で、大人社会、黒人社会、
    アメリカ社会のことがいろいろと理解できるようになる。
    だからこそ精神的にも格段に成長するこの時期に不安定になり、
    いわゆる非行どころか、ゲットーゆえに直接、
    犯罪に走り出す子どもが出て来る。
    貧困に基ずくさまざまな問題は、子どもにも容赦なくプレッシャーを与えるのだ。
    
    
    この時期にクラスメート、先生、親に「ファック・ユー!」などと言い、
    反抗的になる子どもの場合、それは言葉に留まらず、
    他にもリスクの高い行動を伴うことが多い。
    極端なケースでは、
    その年齢でストリートに出てドラッグディーラーまがいのことを始める。
    そこまで行くと、近い将来にほぼ破滅の道を歩むこととなる。
    
    
    つまり、その年齢の子どもにとっての「ファック・ユー!」は、
    ドラッグ、銃、暴力を含むゲットー文化の象徴であり、
    ストリート人生の入り口となる。
    
    
    ゲットーに暮らす以上、そういった世界と無縁ではいられないし、
    無縁でいるべきでもない。
    子どもたちはゲットー文化を体現する友人や大人たちと、
    うまく共存していく必要があるからだ。
    ゲットー文化を理解し、共存を学び、
    なおかつリスクの高いものからは適度な距離を保つバランス感覚を、
    ゲットーの子どもたちは身に付けなければならない。
    
    
    そのためには、
    まず親や教師がストリート文化、ゲットー文化を100%否定はせず、
    しかし小さな子どもに浴びせかけないよう気をつけるべき。
    例えば、子どもの目の前で親がカースワードだらけの痴話ゲンカをしない。
    親も人の子、時にはケンカも仕方ないけれど、
    子どもの前ではある一定のルールを守るべき。
    自身も若い黒人である学童保育のカウンセラー(先生)は、
    それが趣味なら自宅や通勤の際にギャングスタ・ラップを聴いても全く問題はない。
    けれど子どもに学童保育の場で聴かせるべきではない。
    (ヒップホップ全てがダメということではなく、リリックに問題のあるもの)
    
    
    ハーレムにある家庭・学校・学童保育所は、
    物理的には全てストリートに面している。
    しかし壁1枚を隔てた建物の内部では、カースワードを使い、
    暴力やセックスを謳うギャングスタラップを
    「子どもは聴いてはダメなもの」だと教える必要がある。
    家庭や学校を、英語でいう「safe haven」(安全な場所)として維持するため。
    もちろん、
    子どもたちはストリートでギャングスタラップやカースワードを耳にし、
    時には事件にも遭遇する。
    けれど、それは家や学校の「外」で起こること。
    外で何が起こっても、駆け込めば安全を保障される safe haven としての家庭や学校が、
    ゲットーではとても重要だ。
    
    
    ただし、これも9歳くらいになると
    「どうしてギャングスタラップはダメなの?」と詰め寄ってくる。
    ここが親や教師の度量次第となる。
    少しずつ解禁し、なおかつ子どもが極端に脱線しないように目配りをする必要がある。
    子どもが高校生にもなると、それはとても難しくなるけれど。
    (セックスや暴力満載の曲を毎日聴き、そのビデオを観ているティーンが、
    それを実践しない確率は? 歌詞・スラングを全て理解する彼らには、
    リアリティ満点なのだ。)
    
    
    さらに、子どもに中央社会(白人社会)を意図的に体験させることも必要。
    そうしないと白人や中央社会に対して違和感、疎外感を感じ、
    足を踏み入れることを億劫がる、または恐れるようになる。
    ハーレムと、アッパーウエストサイドと呼ばれる裕福なエリアの境界線は96丁目だが、
    ハーレムには96丁目を超えられない人々が多い。
    
    
    けれど、黒人コミュニティには特有の豊かで魅力的な文化がある。
    私の息子には黒人文化をキープし、しかし中央社会にも順応できるスキルを身に付け、
    なおかつ母親である私がアジア系なのだから、
    黒人、白人以外の文化にも親しんでもらいたい。
    
    
    さて、これが実現するか否かは、本当に親次第なのだ。
    (つまるところ、学校を選ぶのも親なのだから。)
    
    
    
    ニューヨーク・ハーレム・ジャーナル



    堂本かおる 
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