ニューヨーク・ブラックカルチャーfromハーレム

ニューヨーク・ブラックカルチャーfromハーレム

New York Black Culture Trivia
New York Black Culture Trivia 2003.07.08
堂本かおる の 『from ハーレム』 (No.59)

「ニューヨーク・エスニック事情あれこれ」




     最近少々忙しく、発行が滞ってしまいました。しかも今回は、ホーム ページの<日々の考察>のコーナーからエスニック関連の記事をピック アップしたものです。既に読んでいただいている方には申し訳ないです。

     なぜ、そんなに忙しいかったかというと、「ニューヨークのセネガル 人」「ニューヨークのラティーノ」について記事を書いていたからなの です。興味のある方は、巻末をご覧下さい。

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    ■2003/07/08 (火) アフリカ人のお母さん

    ブルックリンの奥地(?)で開かれたアフリカン・アート・フェスティ バルに出掛けた。アフリカ人だけではなくて、当然ブルックリンにたく さん住んでいるカリビアン、アフリカンーアメリカンも家族連れで来て いて、にぎやかだけど、のんびりとした楽しいイベントだった。

    ベンダー(露天、屋台)がたくさん並んでいて、アフリカン・ドレス姿 のおばさん2人が店番をしているアクセサリー屋があった。アフリカ人 は、とにかく写真を撮らせてくれない。いまだに「写真を撮ったらタマ シイを抜かれる」と信じているわけではない。不法移民は用心深いのだ。 けれど仕事で必要だったので、敢えて挑戦。

    ひとりは当然のように「ダメよ」。するともうひとりが「あんたもいっ しょに写るなら良いわよ。ほら、こっちに来て、私のヒザの上に座りな さい」。

    腕をつかまれ、半ば強制的におばさんのひざに座らされる。そしてチー ズ。…こんな成り行きで、写真は、私とふたりのおばさんのスリー ショットとあいなった。(これじゃ仕事で使えないんだけど)なんだ か、お母さんみたいだったなあ。

    スリーショットの理由は、私も写っていれば、写真を悪用出来ないから だう。どうしてそこまで用心深いのかなあ。撮らせてくれたということ は、違法移民ではないということなんだけど。

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    ■2003/07/05 (土) ターミネーター3

    『ターミネーター3〜マシーンの蜂起(原題の直訳)』を観た。よく “超ど級のアクション”なんていうキャッチフレーズを見かけるけれ ど、うん、今回アクションは凄かった。と言っても昔ながらのモノ系ア クション(大型クレーン車が街並みをなぎ倒していくとか)が見所で、 SFXはそれをうまく仕上げるために使われている、という感じ。最近の映 画に多い「最新SFXの見せびらかし」的な使われ方はしていないから、そ れ故“昔懐かしいアクション映画”って感じもした。敵役の女ターミ ネーターも格好いいし。

    それにしても、である。最初のターミネーターから約20年、『T2』か ら約10年かな? 今回の『3』でも、物語の核は当然、『1』から延々 と語られ続けている『最後の審判の日』なのである。

    つまり、観客は20年前から「起こる、起こる」と言われていた出来事が 実際に起こるのを「確認」するために10ドルを払っているのである。し かも今回の『3』では、その予告された物語の、ほんの最初の部分で終 わるのである。これは、またしても既知の物語を見せる『4』の存在を 意味する。

    もっともシュワルツネッガーはすでに55歳で、カリフォルニア州知事選 へ立候補しそうなので、『4』が作られるとしたら、今度こそ新人が起 用されることになるだろう。

    ラストは深刻な“人類への警告”で終わるのだが、ターミネーター・シ リーズは、どれも一級のエンターテイメントではあっても、後々まで何 かが残るという類の作品ではない。こんな作品に警告をされても、あま り効き目はないかも、と思いつつ映画館を出たのでした。

    おまけ:舞台はカリフォルニアなのだけれど、脇役にすらラティーノが 出てこない。黒人もアジア系も出て来ない。これはちょっとリアリティ に欠けるですね。 ↑訂正:ひとりだけ、ホセという青年が出てきた。登場後3秒で殺され ちゃったけど。

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    ■2003/07/03 (木) 黒人 in チャイナタウン

    今日は取材でクイーンズのエスニック・コミュニティを歩き回った。フ ラッシング、エルムハーストと、アジア系の多い地区からスタート。

    中国、台湾系のコミュニティはどこも「チャイナタウン」な雰囲気があ る。当たり前なんだけど。つまり、あの独特の密度の濃さというか、要 は「誰も笑ってない」っていうイメージ。

    もちろん、個々の人は笑ってる。フィッシュボール・ヌードルを食べた 食堂のウエイトレスさんは感じがよかったし…、あれ、他には誰も笑っ ていた人を思い出せない。

    しかしながら、歩き回っている時はひたすら取材取材で、そんなことは 考えていなかった。で、路面のでこぼこに足をとられてよろめいた。そ の瞬間、なぜかアジア系コミュニティで立ち話をしていた黒人の中年男 性ふたりが、大声で「大丈夫か?! ボディガードが必要かい? ワハ ハ」と、いかにも黒人さんな明るくて分かりやすいリクションを見せて くれた。

    「ノーサンキュー」と言いながら、顔が笑えてきてしまった。なんだか リラックスできたのだ、彼らの開放感のおかげで。

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    ■2003/06/30 (月) ラティーノおじさんと自販機

    ニューヨークの地下鉄は、長年使ってきたトークンという代用コインを とうとう廃止し、今ではメトロカードと呼ばれる磁気カードでしか乗れ なくなっている。

    メトロカードの自販機でカードを買っていると、メキシコ人のおじさん が、1ドル札を差し出しながら、「買ってくれ」と、自販機を指差し た。おじさん、自販機を使ったことがないのだ。と言うより、地下鉄に 乗ること自体、ほとんどないのだろう。今は2ドルに値上がりしている のだ。

    自販機のスタートボタンを押すと、英語かスペイン語か選べる画面にな る。おじさんに「ほら、ここを押すとスペイン語で買えるよ」と言って も、やはり使ったことのない機械は不安らしい。「でも、買ってくれ」 と言う。

    出てきたカードを渡すと、おじさんは「サンキュー!」と言って、改札 を抜けていった。

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    ■2003/06/29 (日) アジア人同志だから

    久しぶりにチャイニーズのテイクアウトを食べた。仕事で遅くなり、 ハーレムに着いた頃には料理をする気など、とっくになくなっていたの だ。

    カウンターには20代前半くらいの、かわいいチャイニーズの女性がい て、客から注文を取り、できた料理を袋に詰め、その合間にデリバリー の電話を受け、と忙しそうに働いている。色白で可憐な感じの人だけれ ど、笑顔は見せず、電話で相手の言うことが聞き取れなかった時には、 なんとも無愛想な声で「はぁ?!」と聞き返している。

    でも、これは彼女が本当に無愛想な人柄だということではない。チャイ ニーズのテイクアウト屋では、これが当たり前のマナーなのだ。客の方 も、こんなものだと思っている。

    けれど、私に料理を渡しながら、彼女は「サンキュー」と言って微笑ん だ。アジア人同志のよしみなのだ。ただし、これはダウンタウンでは起 こらない。ここはハーレムなので、アジア人の客はめったに来ないから だろう。

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    ■2003/06/29 (日) チャイニーズ・サム

    今週は暑かった。先週まで「寒いね」と言いながら傘をさして歩いてい たのに、月曜日からいきなり灼熱の真夏日となった。こうなると、炎天 下の街並み撮影は、もう肉体労働だ。

    そんな中、ひとりのカンボジア人男性に会った。彼はハーレムに住んで いる。みんな彼をチャイニーズのサムと呼んでいる。本人も自分はチャ イニーズだと言う。ところが、実はカンボジアからやって来た、中国系 カンボジア人だったのだ。

    けれど、世界中に散らばる華僑や、中国系●●人たちは、自分をチャイ ニーズだと言う。どの国に住んでいようと関係無ない。あくまで「中国 人」なのだ。中国の文化とアイデンティティが、それだけ強固だと言う ことだろう。

    そのうち、チャイニーズ・サムにインタビューをしよう。面白い話を いっぱい持っていそうだ。

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    ■2003/06/25 (水) マルタ島のフランキー

    マンハッタンの高級住宅地で、制服のドアマンがアパートメントの前に 立っている写真を撮影。

    もう60代半ばと思えるドアマンは、喜んで撮影させてくれた。ドアマン は基本的にはヒマというか、刺激のない仕事なので、些細な変化も楽し いようだ。加えて、このフランキーおじさんは、話し好きで朗らかな人 柄。

    「ボクがどこの出身だか分かるかい? スパニッシュでもイタリアンで もないよ」「地中海の地理には詳しい? Mのつく島だよ」。

    撮影させてもらったお礼も込めてお喋りに付き合う。マルタ島出身のド アマンには以前も会ったことがある。その時には私はマルタ島のことな ど全く知らず、家に帰ってから地図帳を開いた。次に同じビルに行った ときに、ドアマンに「マルタ島って、とても綺麗な島みたいね」と言っ たらものすごく喜んでくれたことを思い出す。

    フランキーも、マルタ島のことをとても誇りに思っているようだ。ふた りいいる娘はどちらもマルタ語を喋らず、マルタ島出身者のソーシャル クラブにも加入していないとグチをこぼす。「だって彼女たちはアメリ カ人だものね」と私が言うと、フランキーは「ボクだってアメリカ人 さ。妻はいまだに市民権を取ってないけど、ボクは取ってるんだよ」と 言った。

    「アメリカ人」の定義は難しい。法的にはアメリカ生まれか、移民の場 合は市民権を取れば「アメリカ人」だ。けれど、移民の多くは市民権を 取っても「ココロはマルタ人」だったりする。同時に「自分はマルタ人 だが、ちゃんと市民権を取ったアメリカ人でもある。ビザを持っている だけの移民ではないし、ましてや不法移民などではない」というプライ ドもある。

    この、出身国とアメリカの、ふたつのアイデンティティを移民はみんな 持っている。

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    ■2003/06/14 (土) ニューヨークのラスタ

    何気なくニューヨーク・ローカル局の25チャンネルに回したら(押した ら、か)、懐かしい番組をやっている。レゲエの番組『Rockers TV』 だ。

    アール・チンという中国系ジャマイカンがホスト。今日は、クラブの楽 屋と思しきところで大物レゲエ・グループ、マイティ・ダイアモンドに インタビューをしている。ひとりはガンジャ(マリファナ)でハイに なっていらっしゃるのが一目瞭然だ。目を閉じてピースフルな顔立ち で、なにやら歌い始めた。

    レゲエのPVも流れる。ジャマイカのローカル・アーティストのPVは、ほ とんどシロウトの撮ったホームビデオだ。ヒップホップの影響をかなり 受けているタイプで、「フッドでホーミーに囲まれ、車の中で女とい ちゃつく」という内容だが、みんな<極貧>そう。歌っている本人も一 般人風なら、ヨコにいるガールフレンドも全然綺麗じゃなくて、スタイ ルもよくなくて、ほんと、地元のあか抜けないけど気だての良い娘って 感じ。(←かえって好印象)背景はトタンとコンクリート・ブロックの 掘っ立て小屋だ。

    CMも凄い。ブロンクスとかクイーンズのハーブ屋とか、軒の傾いたジャ マイカン料理屋とか。でも大鍋で煮ているゴートカリーは美味しそう。 そうそう、ラスタはへルシー志向なので自然食品屋やハーブ屋に足繁く 通う。以前、地下鉄の中で見たラスタ3人組は、紙パックの豆乳を飲ん でいた。でもガンジャは健康に良いのか?

    アフリカンーアメリカンにも得体の知れないオヤジはたくさんいるけれ ど、ジャマイカンのほうが凄いかもしれない。今、画面では白いローブ 姿のあやしいオヤジが、カイエンペッパーがいかに身体に良いかを延々 と説いている。

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    ■2003/06/09 (月) 交通事故も相手を見て起こすべし

    マンハッタンの高級住宅地、アッパーイーストでお茶をしようと、友人 とスタバに向かった。すると店の前で3台の車の追突事故があった模 様。おしゃかになった車の回りに人だかりがしていた。

    想像するに、走行中の車AとBが接触したようで、Aの車体には大きなス クラッチ。その接触の際に、BはAとは反対方向にハンドルを切りすぎた ようで、路上駐車していたCの後部に追突。Bのボンネットは開き、鼻 先がCのバンパー下に潜り込んでいる。Bは廃車にするしかないだろう。

    Aには若い白人男性ふたり、Bには白人の若い夫婦と生まれたばかりに見 える赤ちゃん(!)が乗っていたようだけれど、「とりあえずは全員が 無事でよかった」と言いながら、名前や保険番号の交換をしていた。

    その後、この人たちはCのドライバーが戻ってくるまで待たなければな らない。ここで、誰も口にはしないが重大な問題が露見した。予想され るCのドライバーのキャラクターだ。

    Cの車は、私には車種は分からないが、赤。ナンバープレートは鎖で縁 取られていて、番号は「GATTAGO●」(オレは行かなくちゃならね え)となっている。(ご存じのように、アメリカではナンバーのアル ファベット部分がメッセージになっているものをよく見かける。わざわ ざ売買するのだ)

    つまり、賭けてもいいが、車の持ち主は<マッチョな黒人男性>だ。白 人ドライバーたちは、そうとうヒヤヒヤしながら待っていたいたことと 思う。

    スタバでコーヒーを飲みながら、そんなことをあれこれお喋りすること 30分。Bの車の女性は赤ちゃんを連れて帰宅したらしく、現場には男性 3人が残っている。

    そこへ、ついに赤いCの車の持ち主が帰ってきた! やはり筋肉隆々、 赤いTシャツを着て太いネックレスをした、推定45歳の黒人男性だ。彼 は事態を悟ると、当然、車の回りを一周しながら、なにやら白人ドライ バーに言っている。声は聞こえないが、口の開け方から大声を出してい る様子。(そりゃ頭にくるでしょう)可哀相な白人ドライバーは平静を 装ってはいたものの、内心は<泣きそう>だったのではないか。

    そんな光景を見て、友人と大笑いをした午後だった。

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    ◆New York Black Culture Trivia 堂本かおる(フリーライター)
    HP: http://www.nybct.com
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書・木村怜由

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