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イーストヴィレッジでカスタムシューズを作っている
少し変わった靴屋さんです。
NYイーストヴィレッジの少し変わった靴屋さん
「East Village Shoe Repair」 No.26
2008.07.25

「NYは若者に厳しいのか?」


    先日思い出したように・・・お店に来たハードコアバンドをしている
    お客さんがくれたCDを何気なく聴いてみる。うーん、インディーズとは
    いえなかなかかっこいい!たまに何じゃコレ!?というようなちょっと
    自己満足系(笑)のCDを聴かされ、どうだった?と聞かれ困る事も
    ございますが(苦笑)最近は当たりが多いかも。アメリカの音楽の
    アマチュア・インディーズの深さを感じますね。
    
    レベルが高くって良い無名のバンドがたくさんあり、年齢を聞くと
    えっ?まだ10代なんだアなんて驚かされます。
    実力もある、行動力もある、あとはどうチャンスを掴むか、
    お店で若い人達とお話していると大変だなあとつくづく思います。
    成功できるのは本当に一握りですからね。
    
    こんな感じで良くお店に来る若者たちは私達に自分たちのバンドのCDを
    持ってきてくれますが、音楽だけではありません。自主出版している本、
    プロカメラマンを目指す子が自分のポートフォリオを持ってきてくれたり、
    ビデオを持って来てくれる役者をやっている子やコメディアンの卵達もいます。
    
    またがんばっているのはアーティストの卵たちだけではありません。
    イーストヴィレッジ界隈で学生の傍ら夜にバーやレストランで働く学生達も
    バイトついでにお店に顔を出してくれますが、本当に彼らいつ寝ている
    んだろう?そのたびに若いっていいなーってすっかりおばさんして
    しまうのです。NYは物価が高いし、レントも高い、最近ではガソリンの
    値上がりの影響で色々なものが値上がりしていますから、夢を追いかける
    若者には厳しいだろうなNYは。それでも皆がんばってますよ。
    そういう子にはオーナーもついつい値引きしちゃうんです。
    
    何ヶ月か前に一ヶ月ほど日本に里帰りしていましたが、日本ではニートとか、
    ファミレス難民?ネットカフェ難民などなど、行き場の無い若者達が
    増えていると聞きました。また、若者に限らず30代以上の方々まで職を
    失くして苦しんでいらっしゃるようですね。NYに住んでいる手前、
    あまり詳しい事情は知りませんが残念な事です。
    
    日本もかなり厳しいようですね。
    何とか切り抜けてもらいたいって思いますが、アメリカも一緒です。
    アメリカは外から見れば豊かなようで蓋を開ければ食べるものも無い人達が
    沢山いて貧富の差も激しい、厳しいところです。一見普通の家庭に見えても
    実はローンやカードの支払いで切羽詰っている人たちが多く、
    そしてこの不景気、混乱しています。
    
    特にアメリカ人は株やFXで老後の資金を補う事が多く、このドル安、
    株の下落で予定が狂ってしまい退職したいけど退職できない
    65歳以上の方も増えているそうなんです。
    
    去年行われたネットカフェ難民の全国調査の記事を見ましたが、
    半数以上の方が”今のままでいい”と答えているそうです。
    去年の調査なので現在の事は分かりませんが、寂しいものです。
    また彼らの平均月収は、月13万3,000円とされていますが、
    その少ないような大丈夫なような中途半端な数字がなんとも気になります。
    
    NYにはもっともっとお金が無い若者達が沢山いますが、
    なぜか元気に暮らしている、もちろん保険も何もありませんよ・・・
    でもあまり絶望的な顔をしている人は見かけないような気がします。
    口では社会を批判して、文句を言っている人たちでも何だかんだで
    悩んでいてもしょうがない、何かやらなきゃと即行動に移す人が多いかな
    なんて思います。私達のお客さんの中にも、同居しているバンド仲間に
    家賃を盗まれ、喧嘩してバンドは活動休止、アパートを追い出されてしまった
    お客さんも1週間後にはもうアパートを見つけて今は彼女を養っている
    という子もいました。何とも打たれ強いと感心してしまいます。(笑)
    
    向かい風に向かって前を向いてひたすら突っ走る、沢山の若い人達と
    接していてNYの人々の強さを感じる事が多いのですが、それはNYの話で
    アメリカ全体で考えるとどうなのか?日本のようにニートと呼ばれるような
    若者がアメリカにもいるのか?というと、それはYESだと思います。
    
    何も興味を持たず、やる気もなく、一日中テレビゲームしてマリファナ吸って、
    同じような仲間とツルンで、お金は無いけど何とか暮らせているし、
    いざとなったら親か兄弟を頼ればいいや、アメリカにもそういう若者は
    ずっと以前から沢山います。アメリカの若者もよっぽど甘やかされている
    というのが現実です。
    
    だからといって、夢を追いかけるためタフな生き方をしている若者達を
    捕まえて、あいつらはもともと荒波に耐えられるジーン(細胞)で
    できているんだ!とは考えて欲しくはないですね。人間皆同じです。
    では何が違うんだと言われたら・・・そうですねぇ免疫ではないでしょうか?
    
    日本で学校にも行かず、職も持たないいわゆるニートが増えてきた理由を
    考えると、無気力というのが人間の敵なのではないかなと強く感じます。
    逆を言うと、それだけ目的を持って生きている人がNYには多いのだと思います。
    それがNYにあると思って皆集まるのですから。
    
    嫌でも何でもやらなきゃいけない!やらなきゃ食べるものも買えない、
    住むところも無くなる!だから寝ないででも働く!そのストイックさ、
    そしてほんの少しの夢・希望、そして守りたい何かがあれば、辛い生活にも
    耐えられるのでしょう。そのようにしてアメリカでも特に活気のあるNYに
    住む事によって、厳しさに対しての免疫ができてくるのだと思うんです。
    色々な人と出会い繋がっていく事でひょんな事からチャンスをつかめる
    機会が多い、たくさんのライバルがいるから競争心が燃え上がり自分を
    磨けるという利点が多い、それは東京も同じですね。
    
    その反面、皆自分の事で精一杯でお世辞にも親切ではない、まるで自分が
    否定されているように感じるほど都会は厳しいと思います。
    それに耐えられてこそ人間として強くなれる気がします。それが免疫。
    がんばれば、頑張るほど免疫が付くんです。でも自分が何をしたいのか
    わからないとなれば、頑張りようがありません。とても寂しい事です。
    アメリカも日本も厳しいですが、未来を担う若者達には
    がんばってもらいたいし、私ももっとがんばりたいと思う
    今日この頃なのでした。
    
    ドクターマーティンのブーツが欲しかったのだけれど、お金が無くて
    あと3日でバイト代が入るからとオーナーに取り置きを頼んでいた青年、
    後からオーナーに、彼のバンド最近は有名なバンドの前座でツアーを
    したりしていて調子がいいらしいよ・・・と聞きました。
    
    その後たまたま路上にて彼と遭遇、
    ビッグマックをほうばりながら私に言いました、
    “俺ビッグマック大好き。コレさえあれば元気になれちゃうの。単純だろ?”
    とてもさわやかな笑顔で私の方が元気を貰ってしまいました。
    まだまだ、このような若者に会えるなら世の中捨てた物ではないなあって。
    

    2008.07.25

    ユカ
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    ユカの『イーストヴィレッジ』
    ・バックナンバー:
     http://yousworld.com/ny/htm/shoe-back.htm
    ・East Village Shoe Repair:
     http://vintagecustom.00freehost.com/
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