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イーストヴィレッジでカスタムシューズを作っている
少し変わった靴屋さんです。
NYイーストヴィレッジの少し変わった靴屋さん
「East Village Shoe Repair」 No.13
2005.12.10

「パンクスのジャケットの秘密」


    少し前の話ですが一人の少年がジャケットにビョウを打って欲しいとやって きました。彼はいわゆる常連さんでパンク少年と言うよりはパンクスタイルが 好きな普通の子と言うような感じです。以前からジーンズベストにパッチを 張ったり、アニマルプリントの布を貼り付けたりと、色々と彼のジャケットの 面倒を見てきたのですが、今回はかなりの量のビョウを打ってもらいたいらし く・・・。“50ドル!!”がオーナーの答え。“なんで!?ビョウを打つ だけじゃん、お金がないから20ドルにしてくれー”と、粘られ結局30ドル まで値下げをさせられてしまいました!?

    私的には、まあ一応常連さんだしいいんじゃないの?といった感じで流して いたのですが、その作業を見たらオーナーの気持ちがわかりました。ビョウを 打つのって本当に面倒くさくって時間が掛かるのです。そう、やったことの ない人にはわからないものなのです。だから、少年とオーナーとの価値観に 違いがあったのです。やったことのある人とやったことのない人の違いと いうわけです。ビョウをつけたいところに穴を開けて、ビョウをさし、裏側 で留める、の繰り返しを手作業で黙々とやっていくのを想像してみてくだ さい。その上、カスタムやら靴の修理やらが山済みなのに、ビョウを打つこと に時間が取られていくのですからオーナーもイライラしてきます。“うーん、 疲れちゃったなあ・・・”などと小言を言ったりして。

    そんなこんなしている中、他のパンクキッズ達がふらふらとお店に入ってき ました。彼らはいつもセントマークスにいるので、よくオーナーに挨拶しに 来る顔馴染みです。“元気?何してんの?、何ー!!ビョウなんか自分で 打たなきゃだめよ!邪道だ!!”と冗談まじりで突っ込み始めました。彼ら いわく、自分の手ででビョウを打って自分だけのジャケットを作り上げる もので、人にお金を払ってビョウを打ってもらうというのはパンクの道から 外れているらしいのです。うーん、なるほどねえ、いつも何気なく見ていた パンクファッションですが一つ一つ自分たちで手作りしていたのですね。 私は特にパンク系の音楽に詳しいわけでもなくあまりパンクの歴史には精通 していないので、そういうものなんだあと感心してしまいました。確かに良く 見せてもらうとパッチも手縫いだし(スティッチがチクチクと不ぞろいで かわいい・・・)、自分の好きなバンド、自分の所属しているバンドのロゴ もマーカーで手書き!?(笑)で味があります。そしてビョウをつける位置 も人によって方のみとか背中全体、腕だけなど違うデザインなんですよね。

    どうしてこんなことを思い出したかと言うと(前書きが長くってすいません)、 最近めっきり寒くなりいわゆるパンクキッズのトレードマーク、ライダース ジャケットが売れ出したからです。毎年のことですが、お馴染みのキッズ たちか友達を連れて来てくれたり、口コミで聞いたと言う子が来てくれたり と、とにかくライダースジャケット!ライダースジャケット!の連発。 (たまにこの子とこの子も知り合いだったの!?ええ、兄弟?と驚くほど パンクコミュニティは狭いです)彼らは300ドル前後のジャケットはとて も買えませんから安くて状態の良い中古を置いている私達のお店に買いに 来るのです。もちろん私達が売っているのは普通の無地のジャケットです から、これから彼らが少しずつ装飾していくのです。そして世界にたった 一つのジャケットになるというワケです。

    常連さんのパンクなお姉さんが言いました。“そうねえ。ジャケットに ビョウを打ちながら大好きなバンドのCDをがんがんかけまくるのよ。時間 は掛かるけれど、それが楽しいの。だからパンクが好きな人ってたくさんの 曲を知っているのかな?昔のから新しいのまでね。何度も何度も同じアル バムを聞いてしまったりするから歌詞も完璧に覚えてしまうのよ!”この ようなことを聞くと、パンクの世界にどっぷりはまっているのだなあ、好き なんだなあと微笑ましく感じてしまいます。今時何だか健気だと思いません か?もしパンクスを見かけたらあのジャケットて自分で全部やったのね・・・ なんて想像をしてみてください。“かっこいいジャケットだね”と話しかけ たら喜んでくれるかもしれませんね!

    ビョウ・・・鋲、英語ではスタッズ。パンクロックファッションと言えば鋲、 安全ピンなど痛々しいものが多いですね。セントマークスのロック系のお店で 簡単に購入可能。

    PS 私はただのファッション的なパンク風とかメタル風、グランジ、ヒップ ホップ風とか良いと思うし、別にそのファッションをしたいならその道に はまらなきゃいけないとか音楽を知らなければいけないとかは思いません。 しかしながらそのファッションのルーツを知っていると毎日の自分のファッ ションももっと楽しめるし、ストリートを何気なく眺めている時に目に付く 人々のファッションも面白くなるのではないかなあと思いました。

    ユカの『イーストヴィレッジ』
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    ユカ
    East Village Shoe Repair
    http://vintagecustom.00freehost.com/
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書・木村怜由

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